平成29年11月30日(木)に城北高等学校 体育館2階にて、がん検診率向上のための出前講座を行いました。
【講話の内容】
・がんの一般的な話
がんの元は人間の細胞から発生するが、外から入ってくるばい菌と違いがんの治療薬は少ない。1cmまでの大きさになるまで10年~30年とかかって大きくなるので若い頃から注意を払うのが大切。日本人の死因は断トツでがんが1位、年間37万人以上が亡くなっている。日本人の2人に1人が一生のうちにがんになる身近な病気である。そのうち3分の1の人はがんで亡くなっている。がんは遺伝するかという事では一卵性双生児で片方ががんになりもう片方ががんになる確率は10~15%と低く、生活習慣が原因でなる場合が多い。
・タバコとがん
タバコはがんになる原因の第1位(2位感染症、3位アルコール、4位食事、塩分、肥満)で、イギリスの50年間の追跡調査で10年寿命が縮み、がんの部位は肺がんだけでなく全身の部位でがんになるリスクが高まる。タバコはがん以外の病気でも脳卒中など24種類の病気で死亡リスクが増加する。タバコの煙には何千種類の化学物質と何十種類の発がん物質が含まれている。喫煙率は昭和40年に男性は87%であったが現在は28%まで低下している。タバコを吸うとモテるかという調査では付き合うならタバコを吸わない人と答えたのが非喫煙者で男性が83%、女性では74%、結婚するなら男性は87%、女性では81%が吸わない人と結婚したいと答えている。またタバコを吸う人が「かっこいい」と思う人は非喫煙者で男女とも8%以下であった。タバコを吸い始める理由では格好いい大人への憧れ・背伸びが1位、次は友人などに勧められて、ストレス解消、何となくと続くが、大人はタバコを吸う人を見てもかっこいいとは思わない。格好いい人が吸うから格好良く見えるだけで、普通の人が吸っても格好良くは見えないので間違わない様に。
・食事とがん
食事では長寿国日本の和食が理想だが、欠点は塩分が多い。胃がんや脳卒中の可能性が高まるから控えると和食は良い。野菜は胃がんや肺がん等多くのがんの予防効果が有り厚労省は1日350gを推奨している。赤肉は大腸がんのリスクが高いが日本人の消費量は少ないので問題はない。世界的には70g/1日以下を推奨しているが肉ばかり食べない様に。食肉加工品(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)は食べる量に応じてリスクが上がるので食べ過ぎには注意しよう。お酒は飲む量に比例してがん発生率が上がるから飲み過ぎには注意が必要。あまり強調されていないがコーヒーは科学的にがん予防の効果が有り、特に肝臓がん、子宮がん、大腸がんで効果が大きい。一日5杯、飲む量が多いほど予防効果が高い。但し、不眠、高血圧、胃障害等の健康障害もあり、薬として飲むべきではない。お酒は2合を超えるとがんになるリスクが高まるのでほどほどに飲むのが良い。
・肥満と運動とがん
肥満と痩せはがんのリスクと関係している。やや小太りの方ががんにかかりにくい。高度肥満(BMI>=30)はリスクが高いが、一方痩せ過ぎ(特に男性)もリスクが高い。男性はBMI26で女性は22から26でがんのリスクが最低と結果が出ている。女性が若い頃に痩せると乳がんのリスクが高まる。極端なダイエットは良くない。
運動は健康に良いと証明されている。運動を継続してできるかが問題。大人になると運動をしなくなる。現役で仕事している人は10~20%しかない。ツーアップ・スリーダウン運動、階段を利用する。家事も運動となる。運動にはがん予防効果がある。20~30歳の女性の5人に1人が貧血。貧血の症状は「立ちくらみ」ではない。正しくは血液中のヘモグロビンが減って酸欠状態になる。「運動時の息切れ」「氷、アイスクリームをたべたくなる」運動しない人はほとんど気付いていない。運動をする人も運動は出来るがパフォーマンスが落ちて来ても貧血に気付かない。原因は鉄分の不足。思春期の身体の急成長、生理、ダイエットなど原因がある。鉄分を多く含むホウレンソウ、豚レバー、小松菜を食べる。
・感染症とがん
感染症ががんの原因の2番目となっている。B型・C型肝炎は肝臓がん、ピロリ菌は胃がん、ヒトパピローマウィルスは子宮頸がんに関係している。B型・C型肝炎は主に血液から感染するウィルスで血液製剤、注射の回し打ち(違法な覚せい剤など)、入れ墨などから感染する。B型肝炎はセックスからでも感染する。肝臓がんの原因の95%がB型・C型肝炎。感染しても症状が出ないことが多い。ひどくなると黄疸が出て気付く。検診などで見つかる事があるので一度チェックするのが良い。世界の主要国の90%の国でワクチンが導入されているが日本は遅れている。B型肝炎ワクチンが2016年4月より0歳の乳児全員に予防接種されるようになった。C型肝炎は2015年9月に飲み薬で革命的新薬が登場して治癒率はほぼ100%である。日本では胃がんの99%にピロリ菌が感染している。1983年にピロリ菌を発見してノーベル賞をもらった。世界でも80~90%でピロリ菌が胃がんの原因となっている。薬で除菌すると胃がんになる確率が30~40%に低下する。20歳になったらピロリ菌の検査をして下さい。薬を1週間飲むだけで除菌できる。子宮頸がんはヒトパピローマウィルスの感染によって起こる。性行為で感染するが症状が出ない。国はセーラームーンのアニメで「検査しないとおしおきよ!」と宣伝しており検査を勧めている。ほとんどが自然に治るが何度でも感染する。
・セックスとがん
性行為経験の女性は75~80%が50歳までに一度は感染する。治らずに感染が持続すると5~10年掛けて子宮頸がんになる。10代での性行為や複数のパートナーががん発症のリスクを高める。男性ががんになる可能性は低いが女性への感染源になる。ワクチンが2009年に登場して定期接種(12~16歳)が始まったが産婦人科で受けるという問題と副作用で2013年に見合わせるようになった。副作用は日本で5万~10万に1例報告されている。ワクチンを受けてより多くの女性の子宮頸がんを予防するか、副作用を回避するかそれが問題となっている。
まとめとして、氷山の一角に例えるとがんになる前には水面下で喫煙、肥満、食事、運動、感染症などの原因が大きく潜伏している。日頃の生活習慣や症状が出る前にがん検診を受ける事が大切。家に帰ってタバコの話でも何か一つ話題にして教えてあげてください。
最後にがんで余命3ヶ月の患者さんに若い生徒さんへがんの話をすると言ったらがん患者の戦っている姿を見て皆さんも頑張って欲しいとメッセージを貰って来たと、患者さんと奥さんが二人で写っている写真を紹介した。将来、皆さんはおそらく今日のお話が脳裏に残ってがんの予防に努めると思っていると締め括られた。
【趣旨】
がんに関する知識やがん検診の重要性について理解を深めてもらい、大切な人に宛てたがん検診受診を呼びかけるメッセージカードを作成し、早期発見につなげる。
【対象】
1年生 280名
【内容】
1.講話『最新科学が解き明かす 真のがん予防法』徳島県鳴門病院 早渕修氏
2.大切な人への心のこもったメッセージカード作成